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*第19回ヨーロッパ将棋選手権・第5回世界オープンレポート(By 田代秀樹氏)
(初出:将棋パイナップル 海外の話題#29,30,31,32) 著者の了解を得て転載。

The 19th European Shogi Championship and the 5th Worldwide Open Shogi Championship(ESC/WOSC)にこの度初めて参加しましたので、その模様を少しづつお伝えさせて頂きます。

8月7日(木)
ハンブルグ空港を出発し、コペンハーゲンを経由してスウェーデンのヨーテボリ空港に13時着。そこからバス、バス、フェリー、バスと乗り継いで、15時半にようやく会場に到着。(会場の写真

会場は、小さな島の海辺に建つ、ユースホステルと併設された会議場(実際普段はチャペルとして使用されている)。大会後、この島でもうしばらく休暇を楽しむ方もいるようだ。

現在欧州ではスウェーデンが最も普及が進んでおり、将棋playerが100名を超えるそうだ。普及に励んでおられる方々には頭が下がる。

夕食にサーモンを頂いた後、"European Open Blitz Championship"が38名の参加で19時から始まる。スイス式のようだ。組合せが発表され席につき、対局時計が8分切れ負けに設定されている事に驚く。プログラムではこの大会は19時〜22時半までだが、一体何局指すのだろう。早指しが苦手な私はそんなことを思いつつしばし緊張。

1回戦はスウェーデンのVidal4級。私の四間飛車に左美濃でしっかりとした指し回しだった。2回戦はオーストリアのPfaffel二段。私の四間飛車に急戦。定跡を勉強されていて感心した。3回戦はフランスのPottier三段。2年前の欧州選手権者。私の四間飛車。急戦。数少ない英語の定跡書を皆さんで懸命に勉強されている姿が目に浮かぶ。4回戦はオーストリアのSchnider三段。昨年の国際将棋選手権優勝者。私の四間飛車に急戦。有利から好手連発され逆転。最後は残り1秒対0秒で辛勝。欧州トップのレベルの高さを垣間見た。5回戦はドイツのMirnik四段。昨年の欧州選手権者。相振飛車。中盤入口で見落としがあり、戦意喪失しての切れ勝ち。力を推し量れず残念だったが、これで全勝は一人に。6回戦はフランス在住の植村四段。相振飛車。無理攻めを咎められ苦しい所で二歩勝ち。内容はともかくこれで最終戦の結果に関らず優勝が決定。7回戦はオランダのRoquas二段。私の四間飛車に急戦。優勢から見落としで飛車損。ごまかしに行ったがきっちり寄せられる。欧州の層の厚さを知ることができた。結局彼が2位に。

その後、2敗して6位に終わったのが不満のSchniderさんに再戦を申し込まれる。1局目劣勢からのうっちゃり。2局目は相振りで中盤の捻り合いから時計の切らし合い、今度は0秒対4秒で負け。

8月8日(金)
48名の参加者全員が揃い、いよいよ本番がstart(試合前の写真)。ESCはrating上位32名で争われるのだが、私は今回が欧州での大会含めた活動に初参加なので、ratingも仮ということでWOSCにまわる。席についてまたも驚かされたのは、持ち時間が60分(秒読み30秒)なこと。研修会(45分の1分)を思い出す。2年半で十数局だけ指した学生大会では、進行が遅れると秒読みが1分→30秒→20秒と短くなるのが大嫌いだった。内容の納得できる、長い将棋が指せるのは私にはこの上ない喜びだ。

1回戦はスウェーデンのJuntti11級。私の四間飛車に棒銀。双方共40分以上消費。じっくり色々読むことができ楽しかった反面、非常に疲れた。24で早指しをぽんぽん指すのとは訳が違う。昼食後、2回戦はスウェーデンのSkotnichi10級。私の四間飛車に急戦。筋の良い将棋だった。因みに、ESCで負けた人は自動的にWOSCに組み込まれるシステムで、参加者全員、金土日で長い将棋を8局指すことができる。これは有意義だと感じた。3回戦はスウェーデンのNordgren8級。私の四間飛車に急戦。級位者皆そうだが、時折才能を感じさせる好手に出会い、とても楽しい。これでこの日は終了。

ESCの方では、有段者が次々と消える展開。級位者の実力の伸びにratingの上昇が追いついていないのだろう。そんな中、準々決勝ではMirnik四段対Schnider三段のライバル対決。ここで当たるのは勿体無い。これが何と2度の千日手の末、Mirnikさんの勝ち。晩にSchniderさんに、相振りで角交換後打開策は無かったか聞かれたので、二歩持っているので6六角打から端攻めで細かく手を繋ぐ定跡を紹介した所、目をキラキラさせて「メモするからもう1回並べてくれ」。対局中15分考慮して打開策が見つからなかったそうだが、私も杉本先生の本を読むまでこの筋を知らなかった。現状日本人に対して定跡書等の情報量で圧倒的に不利な彼らだが、情報量が追いついたらどうなるのか楽しみだ。

ちなみに彼は、チェス、オセロ、碁、将棋等を飯の種にしているゲームのプロで、囲碁はアマ6段。来週は「子供のチェスキャンプ」に講師として参加。将棋ももっと勉強したいと願っており、フリーの身軽さで、1ヶ月なり日本に行って集中して将棋の勉強をさせて貰えないか、昨年将棋連盟にお願いしたが、残念ながら断られたそうだ。彼が益々上達してモチベーションを高めることは、欧州での将棋普及に相当有用と思うのだが。現在彼は自分一人でこれ以上強くなることに限界を感じ始めており興味を無くして将棋をやめてしまわないか心配だ。連盟に限らず、毎日の様に強豪が集まる所で、どこか無料で短期間彼を受け入れてもらえる所は無いだろうか。

8月9日(土)
4回戦はスウェーデンのJansson6級。私の四間飛車に急戦。ところで妻と話していたのだが、美形の多いスウェーデン人は、将棋playerも美形揃いだ。子供の頃から鍛えて日本でプロ棋士になったらば、女性ファン獲得に相当貢献すると思うのだがどうだろう。

ECSの方は準決勝。下の山は波乱続きだったが、結局Belov二段対Angqvist初段と有段者が残った。上の山はMirnik四段対植村四段。植村さんは京大将棋部OBで在仏7年。ESCは3回目。私も時々見に行ったが、相振りから植村さんが必勝に。そのまま押し切るかと思われたがMirnikさんが猛烈な粘りを見せ次第に怪しくなる。最後は攻めが途絶え入玉模様で逆転かと思われた局面で、盲点になる銀捨てから鮮やかに詰まして植村さんが決勝へ。

午後は各希望に分かれてレク。私はBeachを選び少々泳いだのだが、今でも日焼けで肩が痛い。それはともかく、疲れた頭を休められ、この島を会場に選んで下さった理事の方々に感謝。

5回戦は16時開始でSchnider三段。長い将棋で再戦でき非常に嬉しい。私の四間飛車に棒銀。24で似たような形は経験があったが、じっくり考えてお互いの読みをぶつけ合えるのは至福のときだった。苦しい展開になるも、端の位を楽しみに耐えつつ、ようやく勝ちになったと思い、受け無しの積もりで指した香成が実はただ。一気に泥仕合に。直ぐに互いに秒読みのゾクゾクする展開に。思えばこんな瞬間を待ち望んでいたのかも。最後は私の玉に詰みが生じていたが気付かず詰めろを掛けてこられたので、詰めろ逃れの詰めろで遂に決着。

一方、ESCの方は植村さんが嬉しい初優勝を飾った。

夕食後の6回戦はその植村四段と。相振りを予想したが、優勝して気楽になったの
か、私の四間飛車に居飛車引角。緩めて頂きました。

その後、ドイツ将棋連盟の方々とお話しすることができ、会員にさせて頂くことになった。機関紙を発行されたり、国内の大会を催されたりと、活発な支部のようだ。その甲斐あって、現在ドイツは欧州ではスウェーデンについで多い、50名以上のplayerがいるそうだ。

大会を通じて色々な方とお話させて頂いたが、皆さんプロの先生方が時折欧州を訪れて下さることを、本当に楽しみにし、そして感謝している。指導対局で勝たせて頂いたことが一生の記念だと仰る方もいた。小野先生、豊川先生、高野先生、中井先生、大崎・高橋夫妻の名前等が次々に上がり、話が尽きなかった。

また棋歴の古い方からは谷川俊昭さんの名がよく聞かれた。欧州将棋界創生期の頃の谷川さんのご苦労とご尽力がうかがわれる。この8月から同じくリコーの菊田さんが、私のようにドイツに駐在されると聞いている。高校選手権、学生名人、オール学生、アマ名人、アマ王将x2、アマ竜王とこれだけの全国タイトルを持つ方が何らかの形で関られたなら、皆さん喜ぶに違いない。


8月10日(日)
この日は午前7回戦、午後8回戦、夕方表彰式というプログラムだったが、帰りのフライトの関係で、朝食後、妻と会場を後にすることにした。7回戦で長い将棋でMirnikさんと再戦できないのが心残りだったが。

最後に、本大会に参加できたことを心から感謝しつつ、激闘だったSchniderさんとの将棋を載せて、結びとさせて頂きます。

開始日時:2003/08/09(土) 16:00:00
先手:田代秀樹四段
後手:Gert Schnider三段
棋戦:The 5th WOSC round5
戦型:四間飛車
手合割:平手

▲7六歩  △3四歩  ▲6六歩  △8四歩  ▲1六歩  △6二銀 
▲1五歩  △5四歩  ▲7八銀  △5二金右 ▲6八飛  △8五歩 
▲7七角  △7四歩  ▲4八玉  △4二玉  ▲3八銀  △3二玉 
▲6七銀  △7三銀  ▲3九玉  △8四銀  ▲7八飛  △7五歩 
▲6八金  △7六歩  ▲同 銀  △7二飛  ▲8八角  △7五歩 
▲6七銀  △8六歩  ▲同 歩  △9五銀  ▲6五歩  △8六銀 
▲2二角成 △同 銀  ▲4六角  △5五角  ▲同 角  △同 歩 
▲8八歩  △8七歩  ▲6六角  △4四角  ▲8七歩  △同銀成 
▲7五飛  △同 飛  ▲同 角  △7九飛  ▲7二飛  △8九飛成
▲6四歩  △同 歩  ▲同 角  △6六歩  ▲5八銀  △9九竜 
▲9一角成 △6七香  ▲6九歩  △7一歩  ▲8二飛成 △6八香成
▲同 歩  △7八成銀 ▲5四香  △4二金寄 ▲8九歩  △6八成銀
▲4六香  △7二金  ▲8一竜  △6七歩成 ▲同 銀  △同成銀 
▲4四香  △5八銀  ▲4八金  △9八竜  ▲6五角  △6八竜 
▲5三香成 △同 金  ▲4三香成 △同 金  ▲2八玉  △5九銀不成
▲4九金  △5七成銀 ▲5五馬  △5四歩  ▲同 角  △同 金 
▲同 馬  △4三香  ▲8八竜  △同 竜  ▲同 歩  △4八銀不成
▲5三飛  △4二金  ▲4四桂  △3三玉  ▲3二金  △2四玉 
▲4二金  △2五桂  ▲2六歩  △3九角  ▲2七玉  △3七桂成
▲同 桂  △同銀成  ▲同 銀  △3五桂  ▲3六玉  △5六飛 
▲4六歩  △5四飛  ▲2五歩 

 まで、123手で田代勝ち


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